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【アバルト595コンペティツィオーネ 試乗記】”イカれた小さなクルマ”は今も健在

フィアット500をベースに専用のハイパワーエンジンを搭載したアバルト595。その中でも最も強力なエンジンを積んだ「アバルト595コンペティツィオーネ」に試乗。サソリの毒は魅力的。

2019年はアバルト創立70周年

ABARTH(アバルト)の創設者、Carlo Abarth(カルロ・アバルト)の生年月日は1908年11月15日。星座はサソリ座。15歳でバイクと出会い、エンジニアリングとスピードに魅了され、1949年に自身の名を冠した「ABARTH & C.」を設立。1955年から58年に人気は絶頂、アバルト 750GTなどの名車を誕生させた。「イカれた小さなクルマ」と言わしめ一般の人々からも高い注目を集めた「アバルト 500」は、今回の試乗車、アバルト 595の先祖である。

アバルト595について

現在販売されている姿かたちでのデビューは2009年。このときは「アバルト500」の名。アバルト595となったのは2013年、ベース車両のフィアット500と完全に区別させるための改名とのこと。上級グレードモデル、アバルト695も販売されていたが、現在は595のみのラインナップとなる。2018年10月に一部改良され、Apple Car Play / Android Auto に対応した最新インフォテインメントシステム、Uconnectを採用し、ラインナップを5グレードに拡大、同時に高級ヨットメーカー「リヴァーレ」とコラボした限定車「695リヴァーレ」を発売した。(現在は完売)

モデル名 最高出力
アバルト595(標準モデル) 145PS
アバルト595ツーリズモ 165PS
アバルト595Cツーリズモ
(コンバーチブル)
165PS
アバルト595コンペティツィオーネ 180PS

「イカれた小さなクルマ」はサソリの猛毒を持つ

↓こちらは、FIAT 500(フィアット 500=チンクエチェント)愛らしいデザインで特に女性から高い人気がある。

フィアット500 2016年型

出典:FCAジャパン 広報画像

↓こちら、今回の試乗車、アバルト 595 コンペティツィオーネ。

アバルト 595のベース車両は、フィアット 500。

アバルト595コンペティツィオーネ

ダッシュボードには、「500」のエンブレムがしっかりと残っている。

アバルトファンには申し訳ないが、外装をパッと見ただけでは区別がつかない人が大半であろう。しかし、近づいてよく見ると…

エンブレムは、可愛らしいとは言えないサソリが。それも毒々しい赤と黄色に塗り分けわれている。

タイヤも大きい。さらに近づいて見てみよう。

アバルト595コンペティツィオーネ ブレーキはブレンボ

ブレーキはブレンボ。

赤いブレーキキャリパーが、小さなクルマにしては大きいアルミホイールのスポークの間から見える。ここまで見なくとも、もう普通のクルマではないことが、あまり車に詳しくない方でも予測がつくであろう。

エンジンもタダモノではない。最高出力180PSの1.4Lターボエンジン。車両重量は1,120kg。パワーウェイトレシオは6.2kg/PS。国産車ではトヨタ 86/スバル BRZと肩を並べるパワーウェイトレシオ。

アバルトは公式に0-100km/h加速を6.7秒としているが体感はもっと速い。5秒を切っているようにも感じたのは、エンジンサウンド、引き締まった足回りとコンパクトなボディ、そしてアバルトらしい演出のおかげだろう。

アバルト 595の全長は3,660mm。現在の軽自動車規格の最大全長は3,400mm。全幅こそ軽自動車より幅があるとはいえ、全長4mを切るボディサイズは、かなりのコンパクトな部類。トヨタ ヴィッツよりもコンパクトサイズだ。そんな小さな車に、180馬力のエンジンを搭載した時点で”イカれてる"。

イカれた排気音は最高に気持ち良い。ただし近所迷惑。

↓停車状態でエンジン始動から、少しの空ぶかし(周囲環境とエンジンへの不要な負担に配慮して)を動画に撮ってみた。

この撮影は「SPORTモード」で行った。このモードでは、エンジンのパワーが通常モードとは異なるセッティングとなり、最大トルクが、230N・m/2,000rpmから250N・m/3,000rpmとアップする。排気音も大きくなる。

ノーマルモードでも十分、排気音はイカれており、筆者が自宅の前でエンジンをかけて駐めていたら、近所のご年配の主婦から「うるさいわ!」と言われた始末。筆者は閑静な住宅街に住んではいない。

しかし、この排気音は走ると非常に快感。エンジンの回転数を上げて走りたくなる。ことにマニュアルトランスミッションならギアチェンジの度に回転数を合わせてシフトを決めたい。

しかし、注意が必要なのはタイトなペダル配置。試乗車は右ハンドルで左ハンドル車に比べるとタイトな設計とFCAジャパンの広報担当者が言っていた。筆者の靴のサイズは26.5cmだが、少し油断してクラッチを踏むつもりがブレーキペダルにも靴底が当たってカックンと急制動をかけてしまった。

アバルト595コンペティツィオーネ

ワインディングは最高に愉しいクルマ。

アバルト 595で山道を走るなら、カーオーディオは止めて窓を全開にして走ろう。エンジンサウンドを愉しもう。ただ、イカれた小さなクルマは、「サソリの猛毒」とも言われているので注意が必要だ。

アクセルを踏みながらコーナーを曲がると、ハイパワーなFFの癖、トルクステア(ハンドルを切らなくても左右の駆動輪での駆動力の差異で曲がってしまう現象)が出る。しかし、大きめの幅広タイヤと、締め上げられた足回りで路面にはしっかりと食いついて安定した走りを見せる。

アバルト595コンペティツィオーネ

ホイールベースは2,300mm

ホイールベースが短く操舵がシビアになりすぎないようにするためか、ハンドルは多めに回す感じのセッティングにされている。少しの舵角でスイっと曲がるクイックなハンドリングでなく、しっかりハンドルを切り込んでいって曲がっていく印象。最初は違和感を覚えたが、すぐに痛快なドライビングを愉しませてくれた。いかにもアバルトらしい。

アバルト595コンペティツィオーネはブースト計がつく

ディスプレイ下に3つ並んだボタンの一番左で「SPORT」モードを選択。

ダッシュボードの上に取ってつけたようにブースト計がアバルト 595には装備される。これが気持ちのいい針の動きをする。スピードメーターより見やすい位置でターボ・ブースト圧が確認できるのだ。ターボラグがあるエンジン特性のため、ブースト計の針の上がり方も過給がかかりだしてからキュンと回る。

前述したが、足回りは硬い。快適性を考えられていないのだろう。アバルトはそもそもレースで勝つことを目的としたメーカー。コーナリングは相当に踏ん張ってくれて曲がることが愉しい。

シートもご覧のとおり、レーサー気分を高めてくれる色合いと形状をしている。硬めのバケットシート、特に座面の幅はかなりタイトになっていた。

後席は広いと言えないが、なんとか身長180cmの筆者でも座ることができた。長時間のドライブを後席では小柄な人でも厳しいだろう。

後席の乗り降りも必要最低限が確保されている。これは、ベース車両が、普段乗りを考えて設計されたベース車両、フィアット500の設計のおかげ。

リアシートの背面には、乗り降りのときにシートが前に倒せるように引っ張り式のレバーを備えていた。一応、同乗者への配慮がなされているのだ。

アバルト595コンペティツィオーネ リクライニング調整ダイヤル

サソリのマーク付きリクライニング調整ダイヤル

しかし、運転席、助手席のシートのリクライニング調整は、ドアを開けなければできなかった。シートとドアパネルの隙間に手が入らない。走り出す前にしっかりと調整をしておかねばならない。助手席では高速道路を走行中眠くなってもシートが倒せない。

アバルト595を愛車にするなら、これを不便と思わず、アバルトのスピリットの顕れとして自慢のネタにすべきである。

アバルト595コンペティツィオーネ ラゲッジルーム

あえて大きめのリュックサックとカメラバッグを積んだ状態で撮影。

ラゲッジルームは狭いが、そこそこ荷物は載せられる。普段使いなら苦にならないだろう。2人乗車で2泊3日のドライブ旅行なら荷物はラゲッジルームに、たくさん土産物を買ったら後席に入れて十分対応できる。

アバルト595コンペティツィオーネは、スパルタンな車ではあるが、ドリンクを置く場所はしっかりとあるなど、乗る人への利便性を完全に無視はしていない。

インパネ中央のディスプレイは大きめな7インチ。2018
年9月の改良でインフォテインメントシステム「Connect(ユーコネクト)」が採用されて、「Apple CarPlay」および「Android Auto」が使えるようになった。改良前のディスプレイサイズは5インチと小さめ。

センターコンソールにはUSB接続・給電端子が設けられている。Apple Car PlayでYahoo!カーナビが使えるようになったこともあり、これはとてもありがたい。

意外と燃費が良かった

アバルト595コンペティツィオーネ 給油口

給油キャップにサソリ。猛毒注意と解釈しよう。

さんざん「イカれてる」と絶賛したアバルト595コンペティツィオーネは、発進と停止の多い都心部で6〜8km/L、都心から少し離れた市街地で、ストップ&ゴーの回数が減ると、10km/L前後に。ターンパイク箱根などのワインディング・ロード、郊外での走行では10〜12km/L、高速道路で経済走行を心がけると13〜16km/Lと、思いのほか燃費はよかった。

当然ではあるが、ついつい回して排気音に聞き惚れたり、加速感を楽しんだりするとみるみる燃費が悪くなるのは、スポーツ仕様ターボエンジンの宿命。アバルト595コンペティツィオーネは、安全運転と環境に優しく配慮しながら、サソリの猛毒に酔いしれていただきたい。

試乗車「アバルト595コンペティツィオーネ」スペック表と価格

車名・グレード アバルト 595 コンペティツィオーネ
全長 3,660mm
全幅 1,625mm
全高 1,505mm
ホイールベース 2,300mm
車両重量 1,120kg
乗車定員 4名
エンジン種類 直列4気筒 1.4L DOHC 16バルブ
インタークーラー付きターボ
最高出力 132kW [180PS] / 5,500rpm
最大トルク 230N・m [23.5kg·m] / 2,000rpm
SPORTモード
250N・m [25.5kg·m] / 3,000rpm 
使用燃料 無鉛プレミアムガソリン(ハイオク)
駆動方式 FF
トランスミッション 5速マニュアル
JC08モード燃費 13.1km/L
WLTCモード燃費 -
サスペンション(フロント) ストラット式
サスペンション(リア) トーションビーム式
タイヤサイズ 205/40R17

新車車両価格

アバルト 595 コンペティツィオーネ(右・左ハンドル)
5速マニュアル:3,760,000円
ATモード付き5速シーケンシャル:3,920,000円

今回の試乗ドライブコース

西湘バイパスから箱根ターンパイクへ入り、芦ノ湖スカイライン、箱根スカイラインを通って県道401号御殿場箱根線へ。御殿場市内を抜けて富士スピードウェイをかすめて三国山を登って下る三国峠を走って山中湖の麓へ。小柄なボディでハイパワーなエンジンを積んだアバルト595コンペティツィオーネには最適なワインディング・ロードを中心としたコースを選んだ。

※箱根ターンパイク内での撮影は「」の許可を得ています。

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